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 天気のせいか場所のせいか疲れのせいか、いつもよりずっと暗く感じる夕暮れの道を歩きながら小さな頃を思い出していた。
 子供の頃は郊外の静かな住宅地に住んでいたので、日が暮れると友達の表情もよく見えなくなるぐらい暗かった。ある日、暗くなってもまだカヨちゃんと遊んでいたとき、急に泣き出したカヨちゃんにびっくり。あわててケアしようとしたら、実は泣いているのではなく笑っていた‥‥なんて、どうでもいいことを思い出しながら歩いていた。
 すると、横道からひょっこり出てきた子供がカヨちゃんそっくりに思えてハッとした。
 そっくりと言っても、やけに暗い夕暮れだし、5メートル以上離れて横から見た印象だ。しかも、カヨちゃんの姿なんて半分くらい忘れかけている。
 その子は、ビニール袋に入れた何かをぶら下げ、私の少し前を歩き始めた。
 何十メートルも向こうから、ジッとこっちを見ている女性は、きっとこの子のお母さんだろうな。
 女の子が走り始めると、遠くからお母さんが大声を出す。
「走らなくていいから、キッキ! は・し・る・な!」
 キッキ? 名前?
 私は “カヨじゃないのか” と思った。あたりまえだ。
 女の子がなぜかこちらを振り返り、足をゆるめて “え?” という顔をした。まるで何か言いかけるように口を開いて息を吸ったと思ったら、“やっぱりいいや” という風にその息を吐き、向き直ってお母さんのほうに走っていった。もうお母さんは注意しない。
 数十秒後、女の子が入って言った家の門を見ると、表札は「山本」だった。よくある苗字だが、カヨちゃんも山本だった。自分でもよくわからないんだけど、なぜかすっきりした。
 ちなみにカヨちゃんはもうこの世にはいない。
2016/07/03(日) permalink
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