屋上と言っても十階建てのビル。視界を遮るもっと高いビルも近くにあって、絶景にはほど遠い。でも、多くの人が行き交うこの街の中で、誰もいないこの場所は少しだけ特別だ。
半端な高さから見下ろすビル街は、けっこう汚い。特に、小さなビルの屋上は、貯水タンクや室外機が目立ち、裏側のような雰囲気だ。いま私が立っているこの場所と同じような、ほかのビルの屋上があっちこっちに見えて、それぞれが近くて遠い場所に思える。
こういう場所に立つと、意味もなく飛び降りることを想像してしまう。目的もなく屋上にいる私と、そうじゃない街の人々は、すごく無関係で、私が飛び降りたところで、どうってことないように思えてしまう。
私はいつも、この街をちょこまかと動きながら、ささやかすぎるケイザイカツドウとやらを行っている。頭の中で何を考えようと、少しだけ輝いたり落ち込んだりしようと、やっているのはそれだけのことだ。